(記事初出:2014年12月22日)

 なぜ洋画とかの吹き替えはしゃべり方が不自然ですか (言語学板

1 : 名無し象は鼻がウナギだ![] 投稿日:03/06/23 14:46
語る


28 : 名無し象は鼻がウナギだ![] 投稿日:03/06/25 11:31
男言葉、女言葉を強調しすぎで違和感があるし、口調がくだけすぎ

 外国語の台詞を日本語に訳す際には、必要以上にくだけた言葉が用いられ、また、性差がやたらと強調されることが多く、時に読者・視聴者に違和感を与える。
 これは映画のようなフィクションに限ったことではない。実在の人物の発言の翻訳も同様である。さすがに<老人語>や<田舎言葉>のような極端な役割語が用いられることは少ないが、タメ口の濫用や性差の強調が目立つ点はフィクションの翻訳と共通している。
 なお、翻訳の言葉づかいというテーマは、トーマス・マーチン・ガウバッツ「小説における米語方言の日本語訳について」[1]、金水敏「役割語と日本語史」[2]、太田眞希恵「ウサイン・ボルトの“ I ”は、なぜ「オレ」と訳されるのか」、仲川有香里「黒人登場人物の<田舎ことば>」[3]、中村桃子「翻訳がつくる日本語」、「「翻訳された女」は、なぜ、「~だわ、~のよ」語尾で喋っているのか。」などの数多くの先行研究でも取り上げられている。

29 : 名無し象は鼻がウナギだ![sage] 投稿日:03/06/25 13:43
「・・・よね。」「・・・だわ。」なんて言ってる若い女見たことねー。


30 : 名無し象は鼻がウナギだ![sage] 投稿日:03/06/25 14:51
>>29
君のまわりがDQNなだけ

 DQNだけでなく、その対極のインテリも同じようなものだ。
 小川早百合氏の調査では、1996年の首都圏の大学生の間では、「~わ。」などの典型的な女性的文末表現があまり使われていなかったことが明らかになっている[4]。当時の女子の大学進学率は現在より20ポイントほど低い25パーセント弱[5]。つまり、当時の女子大学生は、単純計算で同世代の上位4分の1に当たるインテリであったことになる。

39 : 名無し象は鼻がウナギだ![] 投稿日:03/06/29 01:41
吹き替えで「田舎者」が喋る「田舎弁」も変。
「オラがやっただよ」とかいうやつ。
あれはどこの方言なんだろうか?


40 : 名無し象は鼻がウナギだ![sage] 投稿日:03/06/29 01:52
>>39
わたしも同じこと思ってたよ。どこの方言をベースにしてるのか。
風と共に去りぬのマミーとかの言葉ね。
「南部の令嬢がはしたねえですだよ~」とか言ってた。

 典型的な<田舎言葉>は東日本方言の要素を多く取り入れているが、この役割語の成立は江戸時代にまでさかのぼることができる。江戸時代、江戸の住民にとって最も身近な田舎は、江戸周辺の農村地帯であった。そのため、江戸の戯作では田舎者の言葉づかいとして関東各地の方言が用いられた。このことが、後の東日本方言ベースの<田舎言葉>という役割語につながっているのである[6] [7]
 しかしながら、<田舎言葉>は純粋な東日本方言というわけではない。例えば、木下順二の戯曲「夕鶴」や安部公房の小説「夢の兵士」などでは、東西の方言がまぜこぜに使われた、一概にどこの言葉とも呼べない<田舎言葉>が用いられている[6]。また、同じ「東日本」であっても、特定の地域の言葉のみを参考にしているわけでもない。さらに、共通語の「に」・「へ」に相当する助詞「さ」を「を」の意味で使うなど、現実の東日本方言ではありえない表現もしばしば見られる。
 つまり、役割語としての<田舎言葉>というのは、具体的な一地域の方言などではなく、いかにも田舎っぽい表現を寄せ集めて作った架空の言葉づかいなのである。

48 : 名無し象は鼻がウナギだ![sage] 投稿日:03/06/29 13:03
>>39-40
金水敏『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』(岩波書店、2003)参照のこと。

 この本は役割語についての基礎的文献であり、専門の研究では必ず引用されるものなのだが[8]、スレッド内で言及しているのは48だけである。

190 : 名無し象は鼻がウナギだ![sage] 投稿日:2008/12/28(日) 08:11:17 O
>>39
UFOの第一発見者の農民の吹き替えとかねw

 <田舎言葉>を話すUFO第一発見者の農民など、パロディーでしか見たことがない。

52 : 名無し象は鼻がウナギだ![] 投稿日:03/07/01 02:20
洋楽のミュージシャン関係の談話の紹介も何か変。
何でタメ口? オレあんたの友達じゃないんスけど・・・・・・・


53 : 名無し象は鼻がウナギだ![sage] 投稿日:03/07/01 03:28
当時はツアーとレコーディングの繰り返し。
テンションを保つのが難しかったし、三人ともナーバスになっていたよ。
まるで世界中を敵に回した気分さ。

しかしある時気づいたんだ。
もっとシンプルなやり方があるんじゃないかなってね。


54 : 名無し象は鼻がウナギだ![] 投稿日:03/07/01 12:07
>>53
>まるで世界中を敵に回した気分さ。

この「~さ」って現実では全く使わない言葉だね。
TVなんかでも台本の無い生の発言では決して聞かない。
映画や芝居など台本のある発言専用の言葉だ。

トライデントシュガーレスガムのCM
「ママもこれならオッケーさ!」
が気になってしようがなかった。

「~さ」はいったいどこの言葉なんだろう?

 「翻訳がつくる日本語」で提唱された「翻訳版・気さくな男ことば」の例である。ただし、このような言葉づかいは必ずしも翻訳に限ったことではなく、国内作品の日本人キャラの台詞にも用いられることから、「翻訳版」を外して単に<気さくな男ことば>と呼ぶべきであろうということは、以前も述べた通りである[9]

55 : 名無し象は鼻がウナギだ![sage] 投稿日:03/07/01 14:28
>>52
洋楽のミュージシャンに限らず、コンピュータ関係(特にMacintoshかな)の人の
インタビューもそうですね。ラフさを表現したいんでしょうね。
実際は、皆が皆ラフってわけじゃないと思うんだけどな~。

>>54
前橋市出身の友人が「言ってたんっさ~」などと語尾につけてた記憶が。

 よその方言を持ち出すまでもない。終助詞「さ」は東京方言の範疇である。
 終助詞「さ」の使用例は江戸時代にまでさかのぼることができる。長崎靖子氏によると、当初は丁寧表現として男女ともに用いられてきたが、明治・大正時代になると丁寧表現での使用が減り、使用者も男に偏っていったという。さらに、近年は終助詞としての使用が減少し、専ら間投助詞として用いられるようになった[10]
 長崎氏の調査は小説の台詞を資料としたものだが、もちろん現実世界でも「さ」は使われていた。例えば、江戸出身の幕臣、勝海舟の発言の記録には、「あの通り立談の間に済んだのサ。」のような終助詞「さ」の使用例がある[11]

117 : 名無し象は鼻がウナギだ![] 投稿日:04/05/27 05:32
というか、洋画だろうが日本の演劇だろうが、俺らが日常、家族どうしとか友達どうしで
しゃべるのに、あんなに「滑舌よく」「明瞭に」は、しゃべってないだろう。
結局、台詞がよく聴き取れないんじゃ話にならないから、そうするしかないんだ。
その差が「不自然」の正体だよ。


189 : 名無し象は鼻がウナギだ![sage] 投稿日:2008/09/15(月) 02:09:54 0
洋画の吹き替えじゃなくても、普通に日本のTVドラマの
日本語会話だって十分不自然だと思う。
>>188の言うように確かに近年(…たぶんキムタクあたりから?)は
普通っぽくしゃべる俳優(てか演出?)が増えたが、それでも
しょせんは「ドラマ風の普通」でしかない。
どこがリアル会話と違うかというと、うちら普段あんなに滑舌よく
スラスラ・ハキハキはしゃべってないでしょ。テレビ向きに、聴き
取れるように話すとどうしてもドラマしゃべりになるしかないって
ことだね。

 嘘である。なぜなら、不自然な言葉づかいは文字化しても同様に不自然であり、自然な言葉づかいは文字化しても同様に自然だからだ。

 声の大きさ、抑揚、速度、間、声色などは、喋りにおいては重要な要素であるが、文章になるとほとんど切り捨てられる。もし、117や189の言う通り、芝居の台詞が不自然に聞こえる理由がはっきりとした話し方あるのならば、言葉づかいがどんなものであっても、文字にしてしまえば不自然さに違いは出ないはずである。
 だが、実際はそうではない。例えば、「「翻訳された女」は、なぜ、「~だわ、~のよ」語尾で喋っているのか。」ではエマ・ワトソンと沢尻エリカのインタビュー記事を対比しているが、文字を読んでいるにもかかわらず、前者の言葉づかい(1)は後者のそれ(2)と比べて明らかに不自然に感じられる。

(1) みんなに同じことを聞かれるけど、そのことについてはまったく心配してないわ。ハーマイオニーは素晴らしいキャラクターよ。本当に、誰にも忘れてほしくない。

『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』ダニエル・ラドクリフ、エマ・ワトソン、ルパート・グリント インタビュー - シネマトゥデイ


(2) もともとホラー映画は好きだったので、うれしかったです。怖いの平気なんです。キャーキャー言いながら観ちゃうんですよね! だから、ホラー映画は「やってみたい!」って思っていました。

『オトシモノ』沢尻エリカ 単独インタビュー - シネマトゥデイ

 なぜ、(1)は不自然で(2)は自然に感じられるのか。それは話体のせいである。言うまでもないが、不整表現の有無のせいではない。
 (1)と(2)の最大の違いは、前者が常体、後者が敬体という点である。
 芸能人がインタビューに答えるという場面ならば、(2)のように敬体で話すのが一般的だろう。また、常体で訳すにしても、「みんなに同じことを聞かれるけれど、そのことについてはまったく心配していない。」のような、終助詞を伴わない書き言葉的な言葉づかいで訳せば、臨場感は失われるものの、まだ自然だったろう。実際、新聞記事や報道番組では、このように訳されることも珍しくない[12] [13]
 だが、実際には、エマ・ワトソンの発言はタメ口で訳されている。インタビューにタメ口で答えるというだけでも不適切なのに、その言葉づかいは若年層では死語に近い典型的な<女言葉>。不自然さを感じずにはいられない。

120 : 名無し象は鼻がウナギだ![sage] 投稿日:04/05/27 19:18
映画の吹き替にはあまり違和感を覚えないのだが、通販やインタビュー番組で
の吹き替で、女性の(…よ…わ)。同じく若い男やスポーツ選手のタメ口が不自
然で苦手です。
放送界では、そういう風に翻訳するお約束があるのかな。女や運動選手はアホ
だから、馬鹿っぽさをうんと強調しようとする思惑で。

同時通訳みたく「です・ます」調で通してくれた方がいいとおもうわ。みんなも賛
成してくれると嬉しいぜ。

 新聞記事の場合、地位の高い人物の発言や公的な内容の発言は書き言葉的な言葉づかい(常体、終助詞なし)に訳され、スポーツ選手や学生、芸能人の発言や私的な内容の発言は性差を強調したタメ口に訳される傾向があるという[12]。だから、スポーツ選手などの発言をタメ口で訳す行為に発言者を馬鹿にする意識がないとは言い切れない。
 だが、発言者を尊んでいようが蔑んでいようが、翻訳業界にいかなお約束があろうが、性差の強調やタメ口の濫用が不自然であることに変わりはない。
 日本語話者ならば記者に対しては敬体で答えるのが一般的なのだから、120の言う通り、インタビューの吹き替えも、妙な演出など施さずに素直に敬体に訳せばよいのだ。

173 : 名無し象は鼻がウナギだ![] 投稿日:2008/03/17(月) 12:39:36 O
英語って「言葉遣い」による個性がないよね
「言葉選び」による個性でしか個性を出せないんじゃないか

 173の指す「言葉遣い」と「言葉選び」の違いがよくわからないが、一体173は英語のバリエーションについてどれだけ知っているというのか。何億もの人々が母語とし、数多くの文芸作品を生み出し、寝言から演説まであらゆる場面で用いられている言語をわずかな知識で断じようなど、はなはだおこがましい。

178 : 名無し象は鼻がウナギだ![sage] 投稿日:2008/04/29(火) 01:11:07 O
>>173
英語だって上品な言い方とか下品な言い方とか方言とかで相当な個性があるぞ。
イギリスなんて、列車に乗り合わせた人と二言三言話しただけで、
相手の育ちとか職業とかがかなり正確に分かってしまうぐらいだ。
日本人がそれらの違いを区別できないだけ。

 専門家でもなしに「列車に乗り合わせた人と二言三言話しただけで、相手の育ちとか職業とかがかなり正確に分かってしまう」というのがどこまで本当かは知らないが、イギリスでは地域・階級によって言葉づかいにも発音にも大きな違いがあり、それらと社会的評価は密接に結びついている[14] [15] [16]

191 : 名無し象は鼻がウナギだ![sage] 投稿日:2008/12/28(日) 17:50:02 0
文句あるなら字幕版を観ればいい

 字幕も似たようなものだ。


 さて、役割語に関する本は数多く出版されており、2014年だけでも「コレモ日本語アルカ?」(金水敏 岩波書店)や「<役割語>小辞典」(金水敏:編 研究社)などが発行されている。
 その一方で、2ちゃんねる言語学板に現存する複数の役割語関連のスレッドは、いずれも閑古鳥が鳴いているありさまだ。でも、それは仕方のないことだ。今や役割語関連の本は簡単に手に入る。ちょっとした疑問ならば、本を読めばすぐに解決だ。わざわざ掲示板で憶測を言い合うまでもない。


[1] 「役割語研究の地平」 金水敏:編 くろしお出版
[2] 「日本語史のインタフェース」 金水敏、乾善彦、渋谷勝己 岩波書店
[3] 「役割語研究の展開」 金水敏:編 くろしお出版
[4] 話し言葉の男女差 -定義・意識・実際- 小川早百合
[5] 教育・研究分野における男女共同参画
[6] 「ヴァーチャル日本語 役割語の謎」 金水敏 岩波書店
[7] 「<役割語>小辞典」 金水敏:編 研究社
[8] 翻訳とキャラクターと言葉と役割語
[9] <気さくな男ことば>
[10] 現代語の終助詞「さ」の機能に関する考察 (CiNii) 長崎靖子
[11] 「「方言コスプレ」の時代」 田中ゆかり 岩波書店
[12] 「翻訳がつくる日本語」 中村桃子 白澤社
[13] ウサイン・ボルトの“ I ”は、なぜ「オレ」と訳されるのか 太田眞希恵
[14] 「言葉にこだわるイギリス社会」 ジョン・ハニー:著 高橋作太郎、野村恵造:訳 岩波書店
[15] 「イギリス英語でしゃべりたい!」 小川直樹 研究社
[16] 「図解 メイド」 池上良太 新紀元社