私は辞書マニアではない。家にある辞書の類は30冊にも満たないし、辞書ごとの特徴に詳しいわけでもない。
だが、辞書は好きでよく引く。図書館の参考図書コーナーにはいつもお世話になっている。
お気に入りの辞書は数多いが、まず挙げたいのは『日本国語大辞典』(小学館)や『小学館ランダムハウス英和大辞典』(小学館)などの大型辞書だ。語の意味や書き方を調べるだけでなく、語源や初出を調べる時にも役に立つ。『日本国語大辞典』には上代特殊仮名づかいや京都アクセント、過去のアクセントなども載っていて、なまじっかな専門辞書より便利だ。言葉について調べるのなら、専門辞書の前に大型辞書を引くべきだ。
もちろん、専門辞書も負けてはいない。『英語語源辞典』(研究社)の語源解説は大型辞書より詳しいし、『固有名詞英語発音辞典』(三省堂)には、大型辞典には載っていない固有名詞の発音も書かれている。なお、『固有名詞英語発音辞典』は1969年発行の古い本であるせいか、中国の固有名詞はピンインではなくウェード式で綴られている。
また、辞書の見所は本文だけではない。付録も辞書の大きな魅力だ。
『新明解国語辞典』(三省堂)に収められている「歴史的かなづかい」は、歴史的仮名づかいを決定する難しさについて簡潔かつ具体的に述べた名記事である。
『プチ・ロワイヤル和仏辞典』(旺文社)には、中国・韓国・北朝鮮の固有名詞のフランス語表記の一覧が載っている。中国の固有名詞は、フランス語でも大抵はピンイン通りに綴る。だが、荘子をTchouang-tseu、蒋介石をTchang Kaï-chekと綴るなど、所々にフランス語風の表記が見られて面白い。
『実用中日日中辞典』(隆美出版)は、「資料編」という名の付録が充実している。IT用語、元素名、ブランド名、中国の主な名字、日本の主な名字の中国語読みなど、数多くの一覧資料が揃っていて、雑学趣味を刺激される。
人名の一覧といえば、『ロシア語ミニ辞典』(白水社)や『研究社露和辞典』(研究社)には、主要なロシアの人名(名字、個人名、愛称形)の一覧が載っている。私は人名にも興味があるので、ついつい読みふけってしまう。